第46章 “計画された犠牲”
何が起きたのか、脳が理解を拒んでいた。
どうして、トーリスがここにいて、私を背中でかばうような体勢で、
大量のソースコードを溢れさせて、
――今にも消えそうに“半透明”になっているの?
その理由は、すぐにわかった。
安全なはずの部屋の中に、黒い靄がいくつも湧いていた。
とりわけ大きな黒い靄は、トーリスと私を見下ろすように、“再び”腕を振りおろそうとしていた。
今度は、トドメをさすために。
『電波塔へ! 今すぐ!』
ライヴィスの声に、弾かれたようにエドが私の腕を引いて走り出した。
「エド、トーリスを置いていけない!」
「あれは僕と同じです! プログラムで実体じゃない、正常にシャットダウンすれば僕と同じように現実に戻れます!」
「で、でも……っ」
「やつらの狙いはおそらく#NANE1#さんとヨンスさんです。だから今は走って!」
後ろを振り返る。
確かに、靄が追ってきている。
エドの言葉は本当だろう。
でも、目の前で私をかばって、ソースコードを溢れさせるトーリスが目に焼き付いてしまった。
あれは、もし現実だったら、大量出血しているようなけがを負ったってことだから――