第1章 突然な出会い
激励のメールを打ち返すと、一息ついた私は窓の外をぼんやり眺めた。
家庭科室から葉桜を見るのは、これで2回目だ。
(今年は開花が遅かったから、入学式は桜吹雪がキレイだったんだろうな)
丘の上にある私立逢坂(あいさか)学園は敷地内にも緑が多くて
校門から校舎まで続く桜並木は、受験生にも人気だった。
かく言う私も、入学案内のパンフレットで一目ボレしたんだけど。
「ー!そろそろ焼き上がりそう?」
ドアが開いて部長がひょこっと顔をのぞかせた。
私は慌てて椅子から立ち上がりオーブンへと駆け寄る。
「あっはい!あと5分くらいです!」
「よしよし、それなら余裕に放課後に間に合うね。」
今日はこの後体育館で新歓があり、部活紹介が行われることになっていた。
そして放課後になると、新入生たちが興味のある部活へ説明を聞きにやってくる。
このクッキーは、彼らへのワイロ…じゃなくて、お茶うけだ。