• テキストサイズ

えっくすでーへのかうんとだうん

第4章 かうんと・ぜろ




嘘。なんで。


どくりどくりと脈がなる。
見開いた目に映るその赤は、真っ白な世界の中、鮮烈に佇んで。


どうして。ここにいるの。


「……音也」
『やっと気付いたね、 ななし』

思うことはいっぱいある。言いたいこともいっぱいある。
でも、そのどれもが言葉ならず口から出てきたのは震える声で吐き出された彼の名前だけだった。
いたずらっぽく笑顔を浮かべスマホを耳に当てた格好でこちらを仰ぐ彼を数秒間呆然と無言のまま見つめたのち、はっと我に返って自室を飛び出す。
ぼーっとしてる場合じゃない。
階段を慌ただしくかけ下りて、玄関を飛び出る。

「音也!」
「 ななし」

そうして再び見えたその姿に、迷わず駆け寄って。
私を抱きとめるために広げられた腕、柔らかく作られた微笑みに、私もまた笑みを作ってその懐に潜り込んだ。
そして。

「とりゃっ!」
「ぐふっ……!?」

間髪入れず、鳩尾に一発拳を決めてやった。
突然の襲撃にあい訳がわからないといったように目を瞬かせ若干涙ぐみながらごふごふとむせている音也に視線をくれてやることもなくその腕をわし掴んで引っ張る。

「えっ? ちょ、 ななし? なんで俺殴られなきゃなんないの……? って、そんなにぐいぐい引っ張られると転んじゃうって!」

あわあわしている音也をガン無視して家の中へと詰め込み。
そのままリビングへと追いたてソファーに沈めてやり。
暖房をいれて、キッチンに向かい二人分のココアを作り再度リビングへ。
大人しくソファーに座る音也へココアを差し出して、その隣に腰を落とし自分の分のココアを一口含み。

「で?」

流れるような動作で一連の作業を終わらせた私は、出来立てほやほや熱々ココアをふうっと息をふきかけながらちびちび飲んでいくその様子を見ながら、目を眇めながらそれだけ発した。
キョトンと目を丸める音也。
まったく意味が分かってないらしい。

/ 16ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp