第4章 かうんと・ぜろ
「っ!?」
予想だにしない着信に驚きのあまり漫画さながらびくりと身体が揺れた。
心臓が大きく脈打つのを感じながら、スマホを手に取り画面を確認してみれば。
そこには、一十木音也の文字が浮かんでいた。
まさか。そんな。
どくんどくんと鼓動が速度を増していく。
息をのみ、震える指先で通話ボタンを押した。
『もしもし、 ななし? ごめんね、夜遅くに。今大丈夫?』
「……大丈夫、だけど」
『そっか、よかった』
そっと耳に押し当てた機械越しに聞こえてくるのは、間違いなく焦がれていたその声。
まだ都合のいい夢でも見てるんじゃないかと勘繰ってしまい返す言葉が我知らず掠れた。
けれど、機械を通して聞こえてくる音也の安堵したような声が、これは確かに現実だと教えてくれる。
その事実にじんわりと胸が熱を生み出し、広がっていく。
空虚を埋めていた寂しさが薄れていくのを感じて、自分はなんて単純なんだろうと少し笑えた。
「どうしたの?」
『ん、えっと、……メリークリスマス。って、 ななしに一番に言いたいなって思って。ほら、もう12時まわったしさ』
それだけのために電話してきたのだろうか。
でも、それだけのことが、嬉しい。
『で、窓の外、見てもらいたいなって思って』
「窓の外?」
『うん、カーテン開けてみて』
なんで外? と首を傾げながらも音也の言葉に従うためにベッドから抜け出し窓辺へ近付いた。
カーテンに手をかけて一気に引き開ける。
すると。
暗い雲が厚く覆う空はふわりふわりと白い結晶を地上へと降らして。
見慣れたはずの外の景色は、白一面に様変わりしていた。
「ゆ、き……?」
美しく雪化粧された景色。思わずその光景に見いる。
耳に当てたままのスマホから『ホワイトクリスマスだね』と弾むような楽しげな声が響いた。
『雪もそうなんだけどさ、見て欲しいのそっちじゃなくて。下、見てみて』
場所は違えど、同じように雪化粧された何処かを音也も見ているのだろうか。
そんな風に感傷に浸っていたところそんなもん関係ねぇと言わんばかりに再び指示を出され、先ほどとは違う方向へ首を傾げながらも言われた通りに下を見遣り、はっと息をのみ、瞠目した。
二階にある自室から見下ろす我が家に面した道路の、冷たい真っ白な絨毯が敷かれた、そこに。
その、赤色が、あった。
