第4章 かうんと・ぜろ
「……音也」
眉を八の字にしてしょんぼりと肩を落とす音也に少しだけもたれかかる。
「迷惑なんて、そんなことあるはずないでしょう。会いに来てくれたの、とっても嬉しかったよ。私も会いたかったんだから。本当はすごく、会いたかったんだから……」
ずっと秘密にしていた胸中を素直に吐露するのはどうしようもなく恥ずかしい。
自然と言葉尻が小さくなってしまったけれど、それでも音也はちゃんと聞き取ったようで。息をのむ様子が触れあう身体から伝わってきた。
「さっきは殴っちゃってごめん。混乱してたのもあるけどこの寒い中何してんだこの馬鹿とか思っちゃってつい」
ぐりっとその肩口に頭を埋めて襲撃について謝る。
すぐ側で苦笑が浮かび気にしないでとでも言うようにぽんぽんと頭を撫でられた。
その何気ない仕草にもイチイチときめくったらありゃしない。
ばくばくばくと動く心臓。
音也にも聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい煩い。
でも不思議なくらい、それがとっても心地よかった。
「俺も、いきなり来てごめんね。でも本当に ななしに会いたくていてもたってもいられなくて」
そんな殺し文句に加えてぎゅっと抱き締められて、私はもう何も言えなかった。
背中に回された腕。包まれた身体。
あの夢とは違い、とてもあたたかい。
ああ、音也だ。ちゃんと音也がここにいてくれてるんだ。
そう改めて実感できて、なんだか目頭が熱くなった。
もっとその存在を感じたくて、私も音也を抱き締め返す。
いっそう騒がしくなる心臓は私のものか、あるいは音也から響いてきているのか。
そうして暫く抱き締めあったのち、どちらからともなく顔を近づけ。
その唇を重ね合わせた。
ちゅっと軽い一瞬の口付け。
「 ななし。改めて、メリークリスマス」
「うん。メリークリスマス、音也」
おでこをくっ付けたまま、まだ鼻先が触れあうほどの近い距離で二人一緒に微笑んだ。
聖夜はまだ、始まったばっかりだ。
end