第1章 黒い天使
…?
反応がない…。
篠原さんはさっきからピクリとも動かない。
ただただ酸素マスクの音が病室に響いているだけ
「篠原さんは…、植物状態なんです」
「えっ…」
それから鈴屋先輩は
梟討伐作戦の時の話をしてくれた。
もちろんその話を聞いたときは涙が出そうになったけど、
それよりも鈴屋先輩の表情がものすごく寂しそうで……。
私は心がきゅうううって
締め付けられてる感覚があった。
会ったときからニコニコしていた
鈴屋先輩を、こんなにも哀しい表情にさせる篠原さんは
鈴屋先輩にたくさんのものを与えてきたに違いない。
「さあこのか。帰りましょうか」
私は聞きたいことがたくさんあったけど、その全てを飲み込んだ。
鈴屋先輩を傷つけたくない。
「はいっ!鈴屋先輩!
篠原さん!!また来ますね」
篠原さんに声をかけたけど、もちろん返事はない。
それからの鈴屋先輩は
朝と同じようにニコニコしていた。
でも私は病室での鈴屋先輩の表情が頭から離れない
今日初めて会ったばかりで、変だと思うけど
私は鈴屋先輩の事をもっと知りたいと思った。
ただの好奇心ではなく、貴方の心に寄り添いたいと思ったの
どうすれば鈴屋先輩の心に近づけるだろう?
「うーーーーん?」
「どうしました?このか〜」
「なんでもないです!
鈴屋先輩!今日はありがとうございました!」
「はい~。明日こそ喰種捕まえますよ」
鈴屋先輩と別れた後は、
暗い道をひたすら歩く。
いつもならコンビニに寄って、チョコやケーキを買うんだけど…
今日は疲れてたからいつもは通らない近道に入った。
「う~ん、不気味」
怖いからわざと声を出す
早く帰ろう…
ガサっ
「!?」
何かが動いた音が暗い夜道に響いた。
私が身構えると、深い茂みの中から何かがとびでた。
「きゃっ!?」