第3章 すこしちがう。
あ~もう!
鈴屋くんは恥を知らないんだから…
時計を見ると4時半。
もうそんな時間なんだな…。
休まることなく降り続けていた雨は
少し弱まっている
これだとあんまり濡れずに帰れそう。
窓の外をぼーっと見ていると、
亜門さんがいつの間にか横にいた。
「雨…、弱まってるな」
「亜門さん!」
「今日のゆりこは見る度に別の場所にいるな。
什造の影響か?」
「えへへ…。
そうかもしれません」
でも鈴屋くんと付きあってから
毎日が楽しくなった
「そうだ、ゆりこ
先ほど知行博士から電話があってな
お前のクインケ、修理が終ったそうだ」
「ほんとですかっ!?
よかったです!!」
私のクインケは、
この20区に移動して間もなくの頃
Sレート喰種と戦って故障していたの。
私は鱗赫のクインケなんだけど、
ギミックの構造が複雑で
修理に時間がかかってしまったみたい。
「リン…
元気にしてるかなぁ」
「…ゆりこはクインケの事を人の様に心配するんだな」
亜門さんの運転する車の
助手席に座って、
いつの間にか漏れてた独り言。
「リンは私が初めて倒した喰種から作ったクインケなので…」
「ああ…。
たしか13区のSレート、
『蝶』と呼ばれていた喰種か」
私が二等になりたてのころ
必死の思いで倒した喰種。
鱗赫なのに、羽のような赫子を持つ
まさにちょうちょのような喰種だったな…。
「なぜ名前を蝶にしなかったんだ?」
「それは…」