第9章 ストリーミング・トラップ【元彼】
【Sly bunny】
暗い部屋の中で、タブレットの画面だけが青白く光っている。
数ヶ月前、彼女に別れを告げられ、
あの部屋を去っていったあの日から、僕の時間は半分止まったままだ。
それでも、僕が契約している動画配信サービスのアカウントを
そのままにしておいたのは、単なる解約のし忘れではない。
彼女はプライドが高い。
自分から振った僕に連絡はしてこないだろう。
そして僕もまた、
そんな彼女に理由もなく連絡を寄越せるほど
無鉄砲な性格をしていなかった。
ただ、あのアカウントを彼女が思い出す日があればいい。
ふとした瞬間に、
彼女がそれを見て僕を思い出してしまえばいい、
そう思って放置していただけ、のはずだった。
それなのに、日課になってしまっていた、そのアカウントの確認。
今日もまたいつものように、
あの日のまま、時間が止まっているのだろう。
そう分かっていながら、確認作業をルーティンに組み込んでいた。
しかし、今日はいつもと少し違った画面だった。時が動いたようだった。