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恋愛短編集

第8章 髪を切ったら、“知らない恋”に捕まった【美容師】


「昨日、鏡越しにずっと俺のこと見てくれてたでしょ? 本当はすごく嬉しかったです。鏡越しに目合うたび、逸らすの早いんですよね」
拓海さんは目の前の男のことなんて最初から視界に入っていないみたいに、テーブルに肘をついて私の方に体を寄せた。
 
「えっと、それは、」
「勘違いじゃなかったらいいな、って。
 だから、今日もここで君を見つけた時、運命かと思っちゃいました。あ、ストーカーじゃないですよ?」
ふわりと、昨日覚えたシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。
 
拓海さんは少し唇を尖らせて、悪戯っぽく微笑んだ。その表情が、もう、たまらなくドタイプで。

私が真っ赤になって固まっていると、拓海さんは私の手元に置いてあったスマホに視線を落とした。
 
「お礼、くれるんだよね?
 じゃあ、連絡先。俺の番号、入れてくれません?」
「あ、はい……」
促されるままにスマホのロックを解除して差し出すと、彼は慣れた手つきで自分の連絡先を打ち込んでいく。
 
「……おい!! お前ら、何シカトしてんだよ!!」
完全に置いてけぼりにされていた元彼が、ついに耐えかねたように机を叩いた。
びくりと肩を揺らした私とは対照的に、拓海さんは画面から目を離さないまま、事も無げに言った。
 
「あ、まだいらしたんですか。
 すみません、今大事なところなので。あ、登録できた。ありがと」
​そう言って拓海さんは、私のスマホをテーブルに置いた。
 
対面でアイツが「は!? 舐めてんのか!?」と喚き散らしているけれど、拓海さんは気にする素振りすら見せない。
 
​「……あ、そういえば」
拓海さんはふと思い出したように、私の体全体を品定めするように見た。
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