第7章 Happy Birthday to YOU.
[side アズサ]
「僕が一生分、あなたにこれをつくるの、お誕生日プレゼントにできませんか?」
真っ白なシャツの袖を腕まくりした高城は、恥ずかしがる風でもなく、至って真面目な顔でそう言った。
私はフォークを口に運んだまま、完全に固まった。
心臓が、昨晩のアルコールがまだ残っているのかと思うくらい、ドクンと大きな音を立てて跳ねる。
「っ、な、に言って」
ごくん、とパンケーキを飲み込んで、私は真っ赤になっているであろう顔を隠すように俯いた。
「それって、どういう意味よ」
「どういう意味も何も、言葉通りの意味ですけど」
高城は私の向かいにすとんと腰を下ろすと、呆れたように、でも優しく笑った。
「お姉さんが僕のケーキのファンだって言ってくれたから、パティシエとして一生分の独占契約を結びたいなって。……まあ、男としても、ですけど」
さらっと爆弾を重ねてくる彼に、私は持っていたフォークを取り落としそうになった。
いつもお店で見せていた、あの真剣に厨房を仕切る「職人」の顔。
その彼が、今、私の狭いリビングで、私だけのために笑っている。
「でも、私、あなたの名前すら、昨日知ったばかりなのに」
「じゃあ、これからたくさん知ってください。僕はお姉さんのこと、結構知ってますよ。だいたい水曜日の夜に来ることとか、フルーツとか、甘さ控えめが好きなのに、生クリームは好きなこととか、悩んだ末に子供みたいに笑うこととか」
「え……」
見られていた。
ただの客だと思っていたのに、彼はそんなところまで見ていてくれたのだ。
胸の奥が、温かいもので満たされていく。