第7章 Happy Birthday to YOU.
「それに」
高城はそう言って、ソファの端に置かれた自分のパーカーに視線をやった。
「昨晩、僕の服を掴んで離さなかったの、どこの誰ですか? 責任、取ってくださいね」
それを言われると弱い。私はぐうの音も出ず、真っ赤な顔のまま、冷めかけのパンケーキをもう一口、やけくそ気味に口に放り込んだ。
悔しいけれど、やっぱりお店で食べるよりも、何倍も美味しい。
「一生飽きないって言ったの、嘘じゃないから」
もぐもぐと口を動かしながら、小さな声で呟く。
「だから、毎日とは言わないけど、たまに。たまに、作ってくれるなら、嬉しい、かも」
精一杯の言葉を返すと、高城は一瞬だけ驚いたように目を見張った。
そして、今日一番の、年相応のくしゃっとした笑顔を浮かべた。
「たまにじゃなくて、毎日でも作りますよ。でもその前に」
高城は悪戯っぽく微笑むと、私の手からそっとフォークを取り上げた。
そして、自分用のフォークで、パンケーキの上の生クリームをほんの少し掬い取る。
「お姉さん、名前。なんて言うんですか? 昨日のプレート、書けなかったから」
彼は少しだけ身を乗り出して、私の答えを待っている。
甘いパンケーキの匂いが、ふわりと鼻腔をくすぐった。
「アズサ……、です」
小さく零した名前を、彼は一度だけ、確かめるように口にした。
「来年は、あのピスタチオとフランボワーズのやつ、作ります。
その時はまた、フォーク2本、用意してください。アズサさん」