第1章 飼っていたのは私の筈だったのに【年下】
「ナツキくん、抱っこしてあげる」
隣に座った彼は少し驚いた顔をした後、めんどくさそうに立ち上がり私の足の間に座った。
ほら、やっぱかわいい。
前を向いて座るナツキくんに後ろから抱きつく。
「うぉ。なにしてんだよ、アズサ」
「背中あったかいから」
普段は自分からガンガンこっちに向かってくる癖に自分が攻められるのに弱いのも可愛い。
彼はその私にもたれ掛かった様な姿勢のまま、ポケットからガムを取り出した。
いつも持ち歩いてるそれはよっぽどお気に入りなのだろう。
煙草じゃなくてガムってのがまた、可愛い。
器用に膨らませては割って、膨らませては割って楽しそうにしている。
この子、話さなければ可愛いだけなのに。
「アズサ、その体勢しんどくねーの?」
前を向いたまま、そう聞かれても別にしんどくないし。
寧ろちょっと独占してるみたいで嬉しいだけだし。
「言っとくけど、交代しませんからね」
言うことは分かってる。多分そういう意味で聞いた。
思った通りだったみたい。
彼は小さく舌打ちをしてガムの包み紙を折っている。
可愛い。
私、今日今までに、何回可愛いって思ってるんだろ。
分かんない位そう思ってる。
「なんだよ。ニヤニヤして。気持ち悪ィー」
いや、それ、ナツキくんがいうことじゃないから。
いつもニヤニヤしてるのはそっちでしょ。
振向いてこっちを振り向いてみるナツキくんの顔が近い。
「俺がカッコいいからってそんなに見る?」
自意識過剰気味のこの台詞も彼なら許される。
「なんでもない」
そう言って自分の真っ赤になった顔を彼の背中で隠して俯いた。