第6章 Happy Birthday to me...【ラフ甘男子】
どうしてこうなってしまったのだろう。
無理やり腕を引っ張って連れてきてしまった初対面の男がうちのリビングのソファで寛いでいる。
「まさか、こんなことになろうとは……」
「来いって言ったの、貴女ですよ」
彼はうちに来て早々、リビングの棚に並んでいたワインを目に付けて私にそれを開けさせた。
いつだったか、海外旅行で買ったものだ。
こちらで買うより安いからと買ったものの飲むことは無かった。
正直、私はかなりアルコールに弱い。
一緒に行った友人が買うものだから真似して買っただけだ。
そのとき一緒に買ったインテリアと化していたペアのワイングラス。
それが今は並々にワインが注がれ彼の手に、そしてもうひとつは私の目の前に。
「折角買ったのに飲んでないなんて勿体無いじゃないですか」
彼は機嫌よくワインを口にしている。
私はそれを対面にあるキッチンから覗く。
コンロ上の換気扇にタバコの煙を吸わせるためだ。
「いつもそんな隅っこで煙草吸ってんですか?」
「いや、普段はそのソファで」
「そうですよね、壁ヤニってます」
彼はソファの空いた席を叩いて
「ここ、座ればいいんじゃないですか」
そう、言った。
彼が非喫煙者だろうから遠慮したつもりだったのだが、お言葉に甘えてワイングラスを持ち咥え煙草のままそこに座った。
「私、これでも少し気を利かせたつもりだったんだけど」
「まあ、そうでしょうが、僕は押し掛けた身なので」
いや、私が拉致したに等しい筈。
ワインを口にすることなく煙草を吸ってばかりの私に対して、彼は何杯目かのワインを手酌で継ぎ足していた。