第6章 Happy Birthday to me...【ラフ甘男子】
「あー、何やってんだ、私」
会社を定時に帰宅。手にはケーキ屋さんの箱。
ここのケーキ屋さんは最近知った私のお気に入りだ。
お呼ばれしたときの手土産は勿論、自分用にとたまに買うのが定番になっていた。
箱の中身はもちろんケーキ。ホールケーキ。
今日は1年に1度の、私の誕生日。
それもよりによって金曜日。
「素敵なbirthdayをお過ごし下さい」
なんて会社では言われ帰宅を見送られたものの私はまっすぐ帰宅するだけだ。
まあ、そう言われるのも無理はない。
今日は普段より少しお洒落をして、帰宅間際にいつもより念入りにメイク直しをした。
これは見栄ってやつだ。
二十歳を過ぎて何年たったんだっけ。
とりあえず数えるのが億劫になる位。
そんな私が誕生日にひたすら残業をこなすなんて周りから見れば同情されるに決まってる。
だから如何にも予定がある雰囲気を出した。
「帰りたくないなー」
自宅手前のコンビニで無駄にタバコ休憩をして私は自分を誤魔化す。
このケーキだって 独り者の妬け食いに付き合わされるなんて可哀想だ。
もっと幸せな場所で幸せな一生を終えたかっただろうが仕方ない。
でも、せめて、私は私なりに私の誕生日を私だけで祝おうと勇気を出して買ったのだ。
「HAPPY BIRTHDAY!」と書かれたチョコのプレートまでつけてもらった。
名前は書かないでとお願いしたものの、一人で食べるとはケーキ屋の店員さんも気付かないだろう。
「あー、もうやだー」
ついつい気持ちが声に出てしまう始末。末期だな。
何本目かの煙草を咥えたところで ふと隣に目をやるとそこにひとりの男性がいた。
やば、独り言かなり言ってたよな。
思わず咳払いをして何事もなかったかのように振る舞う。