第1章 the first verse
翔 「(笑)」
耳横で笑う声がする。
翔 「ひかりって緊張すると、まんま態度に出るのな(笑)」
あー、気付かれた(苦笑)
声の方を見上げる。
目元の笑い皺がふいに消えて、真顔になる。
唇が近付く。
星明りの下でキスする。
彼の手が浴衣の襟元を広げて、肩が現れる。
胸元にその手が被さる。
翔 「・・・・浴衣って、脱がしやすくて便利だな(笑)」
ひかり 「(笑)」
私の指も、彼の襟元の合わせを潜って胸筋をなぞってみる。
そのままお腹を伝っていく。
彼の指が私の中に辿り着き、意地の悪い動きをする。
ひかり 「ちょっと・・・・・・ここで?」
徐々に足に力が入らなくなってくる。
左腕で彼にしがみ付く。
翔 「・・・・・いーんじゃね?椅子もあるし(笑)」
椅子?
窓際にある椅子に徐に彼が腰掛けて、腕を伸ばし私の頭を引き寄せる。
キスするのに高さを合わせようと、片膝を椅子と彼の太腿の隙間に乗せて屈んだら。
グイッと腰を引き寄せられた。
腰から太腿を渡って、再び私の中に辿り着く指先に翻弄される。
早く迎え入れたくて、彼を解きほどく。
重ね合わせてきた二人にしか分からない小さな合図。
その合図で、星々の下、影が合わさり一つになる。
自分の中に隙間があるなんて、これっぽっちも思ってなかった。
毎日の生活に不満なんて、何にもなかった。
でもね。
キミと出会って。
好きになって。
気付いた。
身長171㎝もの隙間。
私の中に、こんな大きな隙間があったなんてね。ビックリだよ(苦笑)
キミでいっぱいになる。
キミが溢れてくる。
心が満ちていく。
どんな隙間もキミが入り込んでは満たしてしまう。
胸の中にキミを抱きしめて閉じ込める。
ひかり 「・・・・後で、」
翔 「・・・・ん?」
タバコとシャンプーの匂いを吸いながら、頭頂部に頬ずりして囁く。
ひかり 「露天風呂、一緒に入ろっか。」
翔 「ふははっ(笑)」
キミしかいらない。
他に欲しいモノなんて、何もない。