第1章 the first verse
部屋に戻る長くほの暗い廊下を歩きながら、ふと窓の外を眺める。
大きな窓の向こうには、満天の冬の星空が広がっている。
月と反対側の空だから、月明かりに邪魔されることなく星が煌めいてる。
見たかな?この星空。
部屋では、既に戻ってた彼がタバコを吸いながらタブレットをいじってた。
翔 「おかえり。女湯も広かった?」
ひかり 「うん。そっちもゆっくり入れた?」
翔 「だーれも居なくてさー。泳いでやろうかと思った(笑)。」
ひかり 「(笑)」
バスタオルを掛けながら、部屋の窓から外を眺める。
同じように星空が広がってるけど、部屋の中が明るくて、廊下で見たみたいには星が見えない。
翔 「何見てんの?」
タブレットから目線をこちらにズラした彼が訊いてきた。
ひかり 「ん?星がね。」
翔 「星?」
ひかり 「そう。廊下からはすごくよく見えたんだけど・・・・部屋の中が明るいからかなぁ。イマイチよく見えない。」
翔 「じゃ、部屋の電気消してみる?」
ひかり 「あ、そうだね。そうすれば見えるかも。」
彼がドアの方へ歩いていく。
電気が消える。
暗闇が広がる
少しずつ目がその暗さに慣れて、途端に今まで見えなかった星も一斉に瞬きだした。
翔 「うお!すげー数!ひっさびさに見たなー、こんな星。」
後頭部の方から少し興奮した声が降ってきた。
ひかり 「でしょー?冬だからものすごくキレイに見えるよね。」
外の冷気で冷たい窓に引っ付いて、二人して外を眺める。
星に向いていた意識が、腕を組んで後ろに立っている彼に触れてる背中や肩先にふいに飛んだ。
温かい。
鼓動が微かに伝わる。
もう少しこの状態のまま居たいから、私が意識したことに気付きませんよーに。