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言われてみれば、単純で。

第6章 言われてみれば、単純で。


「これは千日紅っていうお花です」

「センニチコウ?」

「そうです、千日紅。夏に咲く、一年草」

「相変わらずの博識だね」

キョーちゃんは、そのジャスミン茶をカップに注いだ。
すこしずつ、2つのカップを何度も往復させて注ぐ。
確か、そうすれば濃さが同じくらいになるんだっけ。


「はい。どうぞ」

「ありがとう」

少しクセのあるジャスミン茶。本当は少し苦手だった。
だけど、この場で飲まないという選択肢は俺にはない。
だって、キョーちゃんが淹れてくれたんだし、これが最後かもしれないし。
一口目、味わうことなく飲み込んだが、口の中にはこの香りが残っていた。

キョーちゃんは、ゆっくりとそれを飲んでいる。
一方俺はカップをテーブルの上に戻す。

彼女はそのカップを見て、自分のカップもその隣に置く。

「丹羽先輩。もしかして、苦手でした?」

「ちょっとね」

「無理しなくていいのに」

「あまり、かっこわるいとこは、見せたくなかったからね」

「丹羽先輩は充分かっこいいですよ」

なにそれ。今更褒めたって、どうしようもないでしょ。
キョーちゃんはどれだけ俺を傷つければ気が済むんだろう。
悪戯を続けてきた事の仕返しならば性質(タチ)が悪すぎる。

キョーちゃんは俺の方をじっと見ていた。
一瞬彼女と目が合ったがすぐに視線を外した。
だって、さよなら をいう、タイミング、探ってるんでしょ?



「変わらぬ愛」

「なに?」

「千日紅の花言葉です。

丹羽先輩。これ覚えてますか?」

彼女の部屋のローテーブルの上にクシャクシャになった茶封筒。
そして、其処から出されたのは十何年前に毎日のように見ていた、金色のボタン。
中学の卒業式の日、俺が無理矢理押し付けた制服のボタンだった。
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