第2章 君との出会いは、偶然で。
「近すぎですよ。丹羽先輩、本当ストーカーですね」
「偶然だけどね」
「分かってますよ」
キョーちゃんはスキップし始めた。
なにそれ可愛すぎでしょ。
彼女は少し不器用なリズムを刻んでる。
ゆっくり歩く俺との距離はどんどん広がっていった。
彼女は俺から数メートル先を行ったあと突然止まる。
そこからくるりと振り向いて先程より少し大きな声で俺に話してきた。
「丹羽先輩。折角御近所になったのだから暇なときは遊んであげます」
「あげますって」
「会社と家の往復にうんざりしてたとこでしたから」
「じゃあ早速今夜暇なんだけど」
「あ、それはお断りします」
キョーちゃん。
キョーちゃんはやっぱり大人になってもキョーちゃんなんだね。
確か俺は少し冷たくあしらった方が喜ぶんだっけ?
まあ、そう言うとき媚びないとこいいよね。
キョーちゃんの止まった位置まで歩み寄って頭をくしゃっと撫でる。
彼女は身をよじりながら俺の手から放れて笑ってた。
「丹羽先輩に上から見下ろされるのは慣れないですね」
「ま、その内慣れるよ」
「ですかね。とりあえず基本土曜は空いてますから」
「なにそれ」
「暇だったら遊んであげる話です」
土曜。まあ基本は俺も休みだけど。
色々詰め込んだ数ヵ月先までの予定が入ってた。
どうでもいいものばかりだ。
そこら辺で知り合ったコと映画だとかドライブだとかいつも行くバーのイベントだとか高校時代の友人たちとの飲み会だとか。
キョーちゃんと一緒に居られることと比べるとどうでもいいことばかり。
どうキャンセルしていこうかな。
かわいい後輩のためだし、あの店主に『よろしく』って言われたし。
そう先ほど訳も分からずに聞いた言葉を自分に言い訳した。
「俺も暇にしとくよ」
「しとくって何ですか」
「キョーちゃん。明日は空いてる?」
「先輩。早速ですね」
「まあね」
「明日は空いてますよ」
「じゃあ今からうちに来る? もう日にち変わったからね、土曜だよ」
「まだ金曜の25時です」
「そういうこと言うんだ」
頑ななキョーちゃん。
今回だけは彼女の言う通りにしよう。
この様子だと時間はたっぷりありそうだし。