第8章 別稿 私の気持ちは、難解で。
「で、あとは、…お元気で」
続けて書きながら、言葉にしました。こういう場面では、これが適切だと思ったからです。
-
「うん。元気で生きるよ」
「そうですね。それが一番です 勉強頑張ってください」
やはり、最後も同じ言葉になりました。それ以外に、思いつくものがありませんでした。
「キョーちゃんそればっかだね」
「それ以外にいいたいことないですから」
本当は、ないわけではありません。ただ、それを言葉にする必要があるとは思いませんでした。
「そっか」
短く返されました。それ以上は、何も言われませんでした。
「藤崎キョーより。はい、私からの色紙です」
書き終えた紙を渡します。本来であれば捨てる予定だった紙。
それをわざわざ広げて、文字を書いて、渡している。その行為に、どんな意味があるのかは、自分でもよく分かりませんでした。
「ボロボロの結果の小テストだけどね」
「ちょうど捨てるとこ探してたのでいいゴミ箱がありました」
軽く言いました。冗談のつもりでした。
「俺、ゴミ箱じゃないよ」
「知ってますよ、丹羽先輩ですよね」
当たり前のことを、そのまま返しました。紙を渡したあと、少しだけ手持ち無沙汰になりました。何か言うべきなのか、それともこのままでいいのか、判断がつきませんでした。
丹羽先輩の名前を呼ぶ回数は、そう多くありません。
必要なときだけ、呼びます。だから、その呼び方がなくなることについても、特別考えたことはありませんでした。
それでも、ほんの少しだけ、
この時間が続けばいいのに、と思った気がしました。
気のせいかもしれません。