第8章 別稿 私の気持ちは、難解で。
「絶対無理です。そんなに書く事ないです」
「冷たいな。キョーちゃんは」
正直な感想をそのまま伝えました。冷たい、そう言われましたが、事実なので仕方ありません。無理なものは無理なのです。図書委員会の先輩方への色紙にもありきたりの、卒業しても頑張ってください、応援しています。今までお世話になりました、そんな言葉で埋め尽くされてるのです。私はそれに被らないように言葉を選択するので頭がいっぱいになっているのですから。
しかし、丹羽先輩の真っ直ぐにこちらを見る目。それを見ると何かしなくては、と思ってしまっていました。
「仕方ないですね。 この紙のでいいですか?」
ポケットに入っていた紙を取り出しました。丁度、処分しようと思っていたものです。
「なにそれ」
「えっと、地理の小テストです」
広げると、赤いペンで多くの印がついていました。あまり良い結果ではありません。覚える量が多く、関連性も掴みにくいので、どうしても後回しになってしまいます。
「…ほとんど間違ってンじゃん」
「苦手って言ったじゃないですか」
地理はあまり得意ではありません。
世界の首都の名前なんて私には関係のないことなのです。正確には、関係がないわけではないのかもしれませんが、今の私にとって優先度は高くありません。そういうことにしておいた方が、気持ちが楽になります。
この紙は、本来であれば捨てる予定のものでした。書き直す価値もなく、取っておく意味もないものです。だから、代わりに渡すには丁度いいと思いました。
「じゃーもうそれでいいから頂戴」
あっさりと受け入れられました。少しだけ、意外でした。もう少し何か言われると思っていたからです。ぐしゃぐしゃになった答案用紙を丁寧に広げ、色紙があった場所に移動させます。伸ばしても伸ばしても真っすぐにならない紙が机の上で踊っているようでした。