第4章 夏休み開けて
霧が晴れる頃に 91話 救援
ガンッ!
男子達の手が、楓に触れるまであと3cmというところで扉を殴りつけた様な音がする。
「よおっ!俺の幼なじみと親友の大切な彼女になにする気かな?」
ニッコリ爽やかに笑いつつも目が笑ってなく、声もどこか黒い色が含まれている。
そんな聞いた事のない声を出すのは、この事件の原因といえなくもない、雨宮慶だ。
「ふざけるなよ」
普段からは想像もつかない怒りの篭った声を口から零したあと、慶は機能停止している男子達に声をかける。
「ほら、君達、俺を倒してごらんよ、用心棒なんだろ?それとも4人もいて怖いのかな?」
安い挑発…しかしやはり腹が立つ挑発に乗り、1人が慶に向かって来る。
右手を前につきだし慶の肩を掴もうとするが、男の視界は次の瞬間反転する。
慶は向かってきた右手を半身になり避けつつ、左手で男の手首を掴み、その手と男の体の間に体を滑り込ませ更に右手で男の肘を突き上げた後に自らの背中に男を乗せ地面にたたき付ける。
背負い投げを流れるような動作でやって見せたのだ。
「おお、出来るもんだな」
きっと見よう見まねでやったのだろう、感心したように己の右手を見る慶にいつの間に起きたのか男が慶の背中から襲い掛かってこようとする。
「慶ちゃん!」
叫ぶ林にニカッと笑いつけ、慶は後ろを見もせずに裏拳を男の顔にお見舞いする。
あっという間に不良で喧嘩なれしているはずの男はアッサリ慶に倒されてしまう。
他の不良3人と林をさらった女子3人、そして楓も唖然とした。