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霧が晴れる頃に

第4章 夏休み開けて


霧が晴れる頃に 84話 夜道を行く

コーヒーの香りが漂う仁の部屋。楓は美味しそうにコーヒーを飲んでいる。
(7時…か)
この幸せな空間に浸っていたいが、そろそろ楓も家に帰さなければならない。
「楓、そろそろ…」
そこまでいえば楓も察したのだろうコクリと頷いた。

「じゃ、行くか」
え?という顔をする楓に仁は半分飽きれて言う。
「真っ暗だぞ?1人でいかせるわけないだろ」
当然のように言う仁に楓はフワッと顔を柔らめる。
「ありがとう」
そういって2人は夜道を歩き出した。

少し肌寒くなった外、2人同時に身を震わせると体とは逆に心は暖まる。
「運動会結構楽しかったね」
「そうだな、お前の3人抜きとかな」
「なんか転んでたりしてたね」
「林の網くぐりの速さとかな」
「才能だね、他に使うとこないけど」
「慶は安定の活躍だな」
「まぁ、これで活躍しないと…」

本日の運動会の話しで盛り上がっているとあっという間に楓の家の前。

「…じゃ」
仁が挨拶を済ませ、別れようとすれば楓に呼び止められる。
「仁っ…」
「どうした?」
少しだけ楓は「その」とか「えっと」などと言って躊躇うが、頬をほのかに赤く染めて唇を動かす。
「あのっ………大好き」
改めて告げられた言葉に仁は朗らかに笑った。
「俺もだ。じゃあな!」

そう言い、らしくも無くにやける口元を隠すように夜の闇を走って行った。
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