第4章 夏休み開けて
霧が晴れる頃に 83話 何処がよかった?
数分間、仁と楓は柔らかで幸せな空間に浸っていたが、楓はふと疑問に思い、名残惜しくもあるが仁の腕の中から抜けベッドに座り直し、仁に尋ねる。
「ねぇ…私の何処がよかった…?」
本当に不思議そうに言う楓に仁は「え?」と声を出す。
「だって…私、仁になにもしてあげれてない、いつも助けてばっかりなのに…どうして好きになってくれたの?」
仁はポツリと答えた。
「頼ってくれたから」
「どういうこと?」
楓はよくわからないというように問うと仁ゆっくり答えて行く。
「ほら、お前さ、なんでも1人でやってなんとかしようとするだろ?でもその結果、風邪の時倒れてさ、そん時は誰かに頼れよって思ったんだけど、その後保健室で手握ってくれてさ、寝てるけど俺を頼ってくれたみたいでな…」
「あっ、あれはそのっ!」
赤面でなんとか弁解しようと楓が口を開く。が
「嬉しかったんだ」
この一言でなにも言えなくなる。
「頼ってくれて嬉しかったんだ」
追い討ちのように仁がもう一度言う。
「それで…好きになってくれたの…?迷惑かけただけなのに…」
どうも楓は面倒とか迷惑かけたとか思っているらしく、どうしても納得いかないらしい。
(んー…)
ならば納得のいく理由も言ってやろうと思い、思い付くままに楓の好きなところを言いまくる。
「後は、コーヒー飲んだ後の自然な笑顔が好きだしピアノ弾いている時の楽しそうな顔も好きだ。声も柔らかい感じで好き。
俺より少し小さい体がなんとなく惹かれる、それと普通に美人で可愛い」
次々と出て来るお褒めの言葉にもはや納得とかいうレベルでなくなり、キャパシティオーバーした楓は硬直してしまう。
「おーい?楓?」
楓の顔の前で手を上下に振るが反応は無く、ペチペチ頬を叩けばやっと気付いたようだ。
「あっ、ありがとう」
吃りつつも失っていた言葉を取り戻した楓がなんだかおかしくて仁は幸福な気持ちで笑うと楓も軽やかに笑い、2人共、ドサっとベッドに横たわった。