第4章 夏休み開けて
霧が晴れる頃に 81話 2文字への過程
スッと立ち上がった楓はベッドに座っている仁の前に立ち見つめる。
これから伝える言葉はたった2文字。
楓はその2文字を言葉にするのに、どれだけの決心が必要か、どれだけの勇気が必要か、どれだけの想いが必要か、それを恋愛小説を読んだ後のポーッとした頭で考えた事があった。
(自分にそんな時が来るかは別として…)
そんな言い訳がましい事を心の内で言いつつも出した楓の答えは『わからない』だった。
言葉の重みは人それぞれ、自分の場合は経験してみないとわからない、好きな人もいないのではシュミレーションもすることが出来ない。
それで保留にし、それから考えた事は無かった。
再びその事を考えたのは夏祭りの日、自分の気持ちに気付いた夜。
ベッドでひっそり前は出来なかったシュミレーションをしてみた。
(…恥ずかしくて死んじゃう…ね…)
そんな結果に1人陥った楓だったのだがその後の4人で行ったプールで…
「世話が焼けるね、お嬢様?」
そういって助けてくれた仁に改めて惚れているのだと自覚させられた。
そう強く思った矢先でウォータースライダーの組み合わせで林と仁がペアになり、林の性格上、かなり仁と密接した状態になると予測出来た楓は初めての嫉妬を覚え、同時に他の誰にも取られたくないと強く思った。
そんな過程を踏んで、楓の一世一代の告白が始まる…