第1章 入学
霧が晴れる頃に 6話 帰り道
3人は下校中だった。
林と慶は仁の両側を歩き、新しい友達のことを知りたくて小さな子供のような目で見てきながら次々と質問をしてきた。
「霧ケ谷君彼女いるの?」
「いない。いたこともない」
「仁、まさか貴様頭の良い人か…?」
「なんだその言葉遣い。学力はまぁ、並だよ」
「霧ケ谷君、携帯持ってる?メアドと電話番号ちょーだい」
「はいよ。ほれ、書いといた紙」
「林、あとで俺に送れよ」
次々と来る質問を次々と簡潔に答えていった仁だったが(こ、こいつら、よくそんな質問出てくるな…)と、少し、いや、大分質問攻めに疲れて来た仁は話題そらしに
「お前ら目玉焼きになにかける?」と、質問してみたら
「絶対目玉焼きには醤油でしょ!」
「いーやっ!絶対こしょうだね!絶対」
「こしょうなんてマニアック過ぎでしょ!そんなんだからフラれてバッカなの!」
「おまっ…今それ関係ないだろ!第一そんなこといったら林だって彼氏出来たことないだろ!」
「なにおっ!この!私結構コクられてるもん!フッてるだけだし!慶ちゃんとは違うの!」
「林こらぁ、てめ…俺がフラれるのはコクり方が悪いんだよ!それだけ!マニアックとかは関係ない!」
などといつのまにか仁そっちのけで言い争いが始まったが(…どうして目玉焼きにかける物から悲しい恋ばなに変わるんだ…あと…どんなコクり方してんだよ…)と、仁が感想を抱いた頃には別れ道にたどり着いた。
慣れない2人のテンションに疲れた仁は少しだけ(助かった…)
とこっそり思い、2人に「じゃあな」と言って自分の家へ向かう道を進み出した…が、「霧ケ谷君~じゃあねー!また、明日!」
「仁っ!また明日な!」
と、思わず周りにいた他の生徒が注目するような大きな声と力いっぱいに振られている手を無視するわけにもいかず、仁は自分の顔に熱が溜まって行くのを感じながら控えめに手を振りかえしたのだった。