第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 53話 空に咲く
「…落ち着いたか?」
林を抱きしめてしばらく、いや、時間にすれば2分に満たないのだがとても長く感じた時間を断ち切る様に話しかける。
「…うん」
少しだけ名残惜しそうに林はゆっくり仁から離れる。
「色々ありがとう!霧ケ谷君!」
おもむろに言い出す林はまるで何事もなかったかのようだった。
「…もう平気だな」
いつもの林の声や表情を見てホッとした仁はポケットに入っている携帯に慶からメールが来ているのに気付く。
『仁、今さ、雪原さん見つけたんだけどどこにいる?そう遠くないと思うんだが…』
仁は丘のような所にいると返信すると、本当にすぐにやってくる。
「あれ?仁、どうしたの?顔、腫れてない?」
「あー、いや、なんでもない」
「全く、慶ちゃんはぐれないでよ!」
「俺のせいかよ!」
いつものように軽口を叩き、合流する事に成功した4人はもうこの丘で良いだろうと動く事をやめ、すっかり暗くなった夜空を見あげる。
ヒュ~~~ドン!パララ…
突然、大輪の花が夜空に咲く。
最初の花火に続き、次々と色鮮やかな花火が夜空を光らせる。
「わぁぁ…きれい…」
瞳を小さな子供の様に輝かしながら花火を見上げる左隣の林。
「…うん」
言葉を失い惚れ惚れと花火をみる右隣の楓。
「たぁーまやぁぁぁああああ!」
古典的な掛け声?をしながら花火へ叫ぶ仁の後ろの慶。
「ふぅ…」
3人に囲まれてほのぼのした気持ちで花火を見上げる仁。
それぞれがそれぞれの色で見上げた花火は鮮やかで、4人にいつまでも見ていたいと感じさせた。