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霧が晴れる頃に

第2章 テスト…そして夏休み前半


霧が晴れる頃に 52話 怖かった…

「ふぅ…霙、無事か?」
金髪男から逃げ切り、息を切らしてゼェゼェ言ってる林は浴衣も髪も少し乱れてしまっていた。
「だいっ…じょぶ…あ…りがと」
息を切らしながらお礼を言う林が少し落ち着いてからもう一度尋ねる。
「霙…大丈夫か…?どこか触られたりなんか取られたりしたか…?」
仁が思い当たる不良がやりそうな事を一通り聞くと
「あっ…うん、大丈夫、とくになにもなかったよ!」
笑顔で言い放つ林の顔は少し青白い。
そんな林を仁が見逃す訳もなく自然と低くなった声色でもう一度聞く。
「なにされた…」
林までもがビクッと怯えるほどの眼光と声色とは裏腹に仁は単純に心配して言ったのだ。
「えと…その…ちょっと髪を…」
「触られたのか…」
コクンと頷く林の小さな肩はその時を思い出してしまったのか小刻みに震えている。

『怖かった』

その言葉を必死で飲み込んでいる林。
心配も迷惑もかけたくないから、1番甘えたい時に甘えられない。
己を殺してしまう優しい子だと、前に慶から真剣な顔で言われたのを思い出す。
「霙…ごめんな、1人にして、怖かったな」
目線の位置を合わせて言ってやる。

『無理してると感じた時はとにかく1番甘えやすい状況を作ってやってくれ』
そんな慶の言葉に従い声をかけるがまだ俯いている。
(もう一押し…)
頭を優しく撫でてやるがまだ小さな小さな肩は震えている。
(もっと…もっと!)
後で怒られても、嫌われても良いと仁は林の震える肩を包み込む。

ギュッ

優しく、強く包まれた林の小さな体は温もりを求める様に、更に仁に寄り添う。
顔を胸元にうずめ、震える声で林は喉まで出かかってた言葉がやっと邪魔してた物が無くなったかの様に崩れて、出てくる。
「怖…かった、嫌だっ…たの…囲まれて…触られて…嫌だっ…た」
背中に手を回して仁に抱き着きながら止まらない言葉が次々と出てくる。
「髪っ、触られてっ…なんか気持ち悪くてっ…でもっ…逃げられなくて…どうしようって…不安になってっ…」
詰まっていた言葉がなんとか出て、それでも止まらない肩の震えは弱々しくて、仁はもう一度強く抱きしめて、林が落ち着くのを待ち続けた。
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