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霧が晴れる頃に

第2章 テスト…そして夏休み前半


霧が晴れる頃に 49話 自覚

ブシュウウウウ!
  
「きゃあ!」
出口が見えすっかり安心しきっていた楓は最後の最後で噴き出した白い煙りに驚きまた悲鳴をあげる。
後ろからテクテク歩いてきた愉快な2人組はセンサーを見つけずっと煙りを出して遊んでいる。
「っ……怖かったぁ…」
やっと外に出れてホッとする楓は手で汗を拭こうとするが気付く。
右手がずっと手が繋がれたままだったのだ…隣にいる仁と。
「あっ…」
あの日…楓が保健室で寝ていた時と同じ手で繋がれた楓の右手は今日もまたしっかりと繋がれていた。
(安心するんだよね…この手は…いつも…この手に救われる…) 

一緒にピアノを弾いてくれる手
 
温かいコーヒーを入れてくれる手 

頭を優しく撫でてくれる手

不安を和らげてくれる手

自分を守ってくれる手

その全ては仁の手で、誰が頼んだわけでもないのに、いつも救ってくれる。
寂しい時も、寒い時も、熱の時も、怖いときも、不安な時も…いつも救ってくれる。
(私、いつから惚れてたんだろ…)
今、初めて自覚した、初めての感情に少し酔いしれる楓の顔を仁が不思議そうに覗き込む。
「どうした?」
仁が笑いかければ楓は「フフッ」と軽やかに笑い1度仁の手を強く握ってから離す。
「ありがとね」
自然に漏れた言葉は仁を不思議そうな顔にさせたが楓はそれ以上なにも言わずいつまでも遊んでいる慶と林を呼びに行ったのだった。
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