
第2章 テスト…そして夏休み前半

霧が晴れる頃に 48話 お化け屋敷
暗い、暗いお化け屋敷のテイストは廃墟した病院のようだ。
今、仁は楓とお化け屋敷に入っている。
料金は酷く高かったのだが慶から貰ったタダ券を使い出資はゼロ、そんな好条件で入れるのでせっかくだからと4人で入ろうとすればやはり男女1組ずつじゃないといけないらしい。
組合わせは何処から出したのか慶が持っていた割り箸の先を赤く塗ったものでクジを引いた。
そして慶と林、仁と楓になり、まずノリノリな慶林ペアを先に行かせ5分後に仁楓ペアもスタートした。
そして入った瞬間から右腕を両手で掴んできたのは不安で怖くて仕方ない様に見える楓だった。
「ごめん…掴ませて…」
震える声で聞いてくる楓に仁は
「おぉ、意外とビビりなんだな」
と言ってみれば「うるさいっ!」と背中をバンッと叩かれる。
そんなやり取りをするものの右腕を両手で掴んでるから歩きにくいし、楓は浴衣なので進むスピードは遅い…つまり
オガァァァアアア!!
ウラァ!うらめしやぁ!
待機しているお化けがみんな襲い掛かって来るという事だ。
そのたびに楓が小さい悲鳴をあげてしがみついてくるのでいつのまにか腕を組む体勢になっていた。
(…にしても随分元気なお化けだな…)
仁は持ち前の観察力でお化けが待機している場所がなんとなくわかるのであまり驚くこともなく平然と進むが、しがみついている楓が既に涙目なのに気付く。
「お、おい、楓?大丈夫か?」
そろそろ本気で泣きそうな楓は浴衣のとこもあり色っぽくて少々胸が高鳴るのを抑えながら聞く。
「…うぅ……平気…」
明らかに平気には見えない楓の綺麗にセットされた髪を崩さぬ様に、頭をポンポン叩き、ゆっくり進んで行くとすぐ前から悲鳴が聞こえる。
(慶と霙か…)こちらとは違い大騒ぎな2人はとても楽しそうだった。
「林!これみろよ!お墓に万次郎ってかいてあるぜ!」
「なんで!制作者かな!?あははは」
愉快な2人と合流すれば楓も安心するだろうと楓の手を引き、声をかける。
「おい、デカノッポ遅すぎだろ、追いついたぞ」
「お?あ、仁だ、そんな遅かったか」
「あれー?霧ケ谷君だ、じゃあそこにいるのは楓ちゃん?」
「林…助けて…」
話しかけ前を見れば大詰めなのか外の光りが見える。
「ほら楓もうすぐもうすぐ」
と励ますとホッとした顔になり歩くペースも普通になっていったのだった…
