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霧が晴れる頃に

第2章 テスト…そして夏休み前半


霧が晴れる頃に 42話 楓の弁当

不満そうな楓をこれ以上怒らせてはまずいと、まだ卵焼きを頬張っている慶を促す。
「ん?どうし…あ…ああ!雪原さんのね!食う食う!」
一瞬躊躇ったようにも見えたが知らないふりをして仁はなぜかヌメヌメしているきんぴらを取り、慶は不格好お握りを口に運ぶ。
(あまぁぁぁああ!!)
絶叫するのを心の中だけで我慢することに成功した仁と慶だったが甘さに対する反応は隠しきれない。
(なんできんぴらあまいの!?甘すぎだろ!砂糖…いや、ハチミツでもかけたのか!?あ、ヌメヌメはそれか…)
(お握りだろ!?なんで甘いの!?塩お握りかと思ったら砂糖お握り!?間違えたの!?それともこれが正解なの!?)
2人が驚きの甘さに言葉を絶ちつつも心の中では色々と叫んでいた中、不安そうに感想を待つ楓を視線の片隅に見つけた仁はなんとか喉にへばり付くごぼうを飲み込み少し涙目になりながらも「う、美味かったよ!」
と言うがすぐ咳込みながらも、なんとかまだお握りの一口目と格闘している慶の腕を小突く。
「うん!おいしいよ!雪原さ…」
そこまで言って咳き込んでしまった。
そんな2人を見れば口では言ってくれているが察しないわけもなく楓は少しだけ大きな目をうるうるさせ始めた頃に咳込みからいち早く回復した仁は(まずいっ!)とすぐに判断し楓の弁当を次々と食べていく、少し遅れて慶も加わりあっという間に楓の弁当を平らげる。
「ほ、ほら…うますぎてすぐ食べ終わっちゃったよ」
「おう…箸が…とまんなかった」
口の中いっぱいに広がる甘味だったり渋みだったりを堪えながら楓に言えば表情は申し訳なさそうだったが目を見ると水気はひいている。
「ご、ごめんねっ!あっ…お、お茶!」
楓の横にあったペットボトルのお茶を仁は手渡され一気にそれを飲む。
「ふぅ…」と、お茶を飲み干したあと安堵の声を漏らした仁はすぐに真っ赤になった。
『楓の横にあった』のだ、当然楓の飲みかけである。
(ヤバいヤバいヤバい、どさくさに紛れてか、間接キス!?あああ、楓に申し訳ない!そういえば家族ですらしないって昔聞いたような!)
大人びてると言われても恋愛経験も人との関わりも未熟な仁にとっては大変なことで、申し訳なさと恥ずかしさで真っ赤になって押し黙っていれば楓も気付いたのか顔を手で覆ってはいるが隠されきれていない耳やら首やらが真っ赤であった。
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