
第2章 テスト…そして夏休み前半

霧が晴れる頃に 41話 林の弁当
公園へ移動した4人は木陰の机を挟み向かい合わせになっているベンチに仁と慶、林と楓。2人ずつ越しかけ林と楓がそれぞれ朝作ってきた弁当を開く。
「…っ!?」
2人の弁当は相反する関係にあった。
林の弁当は赤、緑、黄、茶、彩り良くつめられ、煮物1つ潰すことなく美しく盛り付けられていた。
反対に楓の弁当は握ってあるお握りはなんとも不格好で、ひよこのような形のものやボールのような真ん丸なのもあった。
おかずはほとんど茶色で申し訳程度にトマトが少し割れて中から汁がはみ出ながら入っていた。
仁にとってはどちらの弁当も予想外だった。
「おい、慶、林の弁当っていつも見た目は綺麗で味はまずいのか?」
前情報との確認を取るためこっそり右でやはり予想外という顔でいる慶に尋ねる。
「いや…前は見た目も悪かったが…もしかして上手くなったのか?」
困惑と期待が含まれる声で返事した後今度は慶が尋ねる。
「雪原さんって、料理できないのか…?とりあえず見た目は悪いけど…」
「いや…俺も見たことないんだ…母親がパートに出ているらしいから経験はあると思うんだが…」
こそこそ話す男2人に大体話している内容が想像できる楓はムッとした顔で「はやく食べなよ」と急かす。
戦場へ向かう前の覚悟を決めた男の顔で2人は箸を持ち、まず林の弁当から卵焼きを取り口に運ぶ。
「んん!?」
口内に入った卵焼きを一心不乱に噛み、喉を通り抜けさせる。
「うまっ!どうなってんの!?林!お前吐くほど下手くそだったじゃねぇか!」
慶が信じられないという声で言うと
「へ、下手?前そんなまずかったの?ま、良いや!すごく上手くなったもん!頑張ったんだもん!ちゃんと本見てつくったんだから!」
と、林が得意げに言ってすぐに
「ね、ね、霧ケ谷君!おいしい?」
と、聞いてくる。
勉強会の時でもあったが仁は褒めるのが苦手だ
ポンッポン
良い方に期待を裏切った林をどうにか褒めようと必死で、凄まじい頭の回転で考えついたのは頭を2回程、箸で塞がっていない左手で撫でることだった。
言葉で褒めてはいないが質問の答えは十分伝わったのだろう、歓喜が隠せず勉強会の時のよう仁に抱き着く。
「おわっ!」考える事が多過ぎた仁にとって予期せぬ事が起こり思わず驚きの声を立てる仁に不機嫌そうに「私のも食べてよ…」と呟やいたのは楓だった。
