第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 39話 決着
点を取られデュースに持ち込まれリードはずっとしているのだが勝負は決まらない。
ローテーションは回って再びライトに慶レフトに嵐山となる。
(これで…決める!)
仁の上にボールが来る、あらかじめサインは出しておいた。
Aクイックだ。
仁は慶を見るとバッチリ出来そうだ。
仁はこれまでとは違う早いトスを放つ。
また、バズーカのような音が聞こえると思いきや、銃くらいの音が聞こえる。打ち損ねたのだ。
「くっそすまん!」
慶が叫びブロック体制に入る。
仁は相手を観察していた。
(6番…体制が崩れてる…4番だ!)
これまでの分析と観察で4番のスパイクがそこまで厳しい物ではないとわかっていた。
(これは、取れる!)
仁の思惑通り旭中のL(リベロ)がボールをとる。
少し高く上がったが仁のところに来る。
そこで仁は観察する
(旭中はどこを見ている…どこに気をつけている…)
答は簡単だった、慶と嵐山だ。
(ならっ!)と、仁は高く飛んで落ちて来るボールを迎えに行く。
西日中がどこにくるか考えているのがわかる。
次の瞬間、ボールはネットを挟んだ向こう側に、落ちた。
敵も味方もなにが起きたかわかっていない。
それもそのはず、仁は初めていま、トスを上げるフリをしてボールを突き出すようにして相手コートにポンッと落とす『ツーアタック』をしたのだ。
そんなに難しい事ではない、ただ仁がこれまで1度も使わず、その選択肢があることを相手チームに忘れさせていたのだ(味方チームも忘れたが)最後の最後に出した切り札を見事成功させたのだった。