第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 38話 試合当日
第3セット 22対23 このセットを取れば旭中のストレート勝ちだ。
白と青のユニフォームに身を包んだ旭中が1点差で負けている。
しかし、仁は落ち着いていた。
(いま相手の前衛は背が低い…まっとうなスパイクで入る…)
相手チーム、西日中学校の前衛は低い、ブロックをされる壁がない。
相手チームのサーブはそれほど強くない。
黄砂が綺麗に仁の所へボールが行くようにレシーブする。
あらかじめ出しておいたライトにいる慶を囮にレフトの2年生WS、嵐山(あらしやま)へ、高めの、打ちやすいトスを上げる。ブロックは2枚。
バン!と音がなるスパイクを打ち、相手のブロックの間を通り床にボールが落ちる。
「よっし!」
これで同点23対23
慶が後衛に行き仁がライトに移動する。
慶のサーブだ。
「ナイッサー!」全員の掛け声をきいた後、慶がボールを高く上げる。
スパイクサーブだ。
バコォオオン!
やはりバズーカでも打ったのではないかと言う音でサーブを打ち込む。
しかし、ボールは相手の正面、相手チームがボールをとる、予想以上に跳ね返り、直接旭中のコートに返ってくる。
「チャンスボール!」
仁のところに再びボールが来る。
(誰を使う…)
正面のレフト方向のスパイカーはまだ体制が整っていない。
(仕方ねぇ!)
仁は大きく、高く、少し後ろの方にトスを放った。
(バックアタックだ)
練習をしていないが仕方ないとばかりに放ったボールは高く高く上がる。
仁は叫ぶ
「慶!バックアタックだ!打ち抜け!」
「バックアタックってなんだよ!」
「このボールを力任せに相手のコートに落としゃいいんだよ!」
高く上げたボールが落ちて来るまでの間にそれだけ説明をする。
慶が飛ぶ、体をしならせる、腕を振る、ボールに届く。
バコン!
慶の高い位置からボールが真っ先にコートに落ちる、相手のコートに。
24対23
「マッチポイント!」
「あと1点!」
旭中のコートが湧く。
しかし、そこからが長かった。