第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 37話 作ってあげる
部活を終え、クタクタになっていつもの集合場所で楓と林に合流する。
仁達が集合場所に行くと妙にニコニコして迎えた林はきっとなにか裏がある。
いつもの分析能力は疲れていても発揮され林の考えを見抜くべく話しかけてみようとするがその前に林が話し出す。
「ねぇ、男子バレー明後日公式戦でしょ?さっき楓ちゃんとお弁当作ってあげて応援に行こうかって話してたんだけど、行っていい?」
林の妙の笑顔はこれだった、仁も慶も勿論承諾するが慶は少し青ざめていた。
元気印の慶が青ざめるなんてどうしたのかと仁が疑問に思えば慶が低い声できいてくる。
「仁…試合って午前?」
とても重要なことでも聞くように慶が明日の試合時間を聞いてくる。
「あぁ、午前だけど?」
それがどうかしたか?とでもいいたげに仁が答えれば急に明るい声色で慶が言う。
「そっか!それなら試合に影響ねぇや!」
仁が「なんで?」と、尋ねれば慶は小さい声で「林の弁当食ったら、腹痛でまともに試合できないかも…だから…」
大抵爽やかか、茶化すように話す慶がこの声色で話すのだから林の料理は相当ヤバいものなのだろう…
(調理部入って…経験は積んでいるはずだから…)
慶が淡い期待をかけている時、仁はあることに気付く。
(俺、楓の料理の腕前しらねぇ!)
仁にとってはそこそこ長い付き合いだがたまに米を炊くために帰ると聞くだけで実際に楓の料理を食べたことも見たこともないのだ。
(出来そうに見えるが…)母が仁の家と同じくパートに出ている楓はそこそこ経験はあるはずだし、頭も良い彼女が出来ないとは思えなかったがなにせ、食べたことがない。
(そういえば、本入部の日に上目遣いで作ってくれるとか言ってたな…)そこそこ遠い記憶を探りその時の事を鮮明に思い出せばあの時の凶悪的な可愛さに顔が熱くなる。
「ま、楽しみにしてる」
無理矢理あの時の楓を一旦頭から消し去り顔の熱さがひいた頃にそれだけ無愛想に言った仁だった。