第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 36話 試合は明後日
時は進み夏休み前日、帰りのHRで五十嵐から宿題をしっかりやるよう釘を刺されたのは10分前のこと。
いつものように部活に行った仁と慶は暑い、蒸し風呂のような体育館で汗を流す黄砂から夏休みの部活予定の紙を配られる。
(…公式戦は…明後日!)
もちろん知ってはいたのだがこうして紙にかかれると実感が湧く。
仁と慶はすっかりレギュラーだった。
それも期待のA(エース)とS(セッター)だ。
仁の冷静な判断と正確なトスに舌を巻く2年生のSは自ら、仁にレギュラーを譲ったのだ。勝つために。
そのことを知っている仁にかかるプレッシャーは並の物ではない。
1年生にして特別背が高いわけでも、飛び抜けた運動能力を持っているわけでもない仁が2年生を退けたのだ、重圧はとてつもないものだ。
レギュラーを言い渡された後、仁は人が変わったように練習をした、フォームや1回1回今のトスは正しかったのか確認してメキメキと上達していった。
それに吊られるように上達していったのは慶を初めとするWS(ウイングスパイカー)だ。
Sのトスを1番受けるポジションであるWSはトスを打つ度に仁のトスが正確で、スピードのあるトスになっていくのを実感しながら、負けずと実力を上げていった。
そして両者のレベルアップによりAクイック、いわゆる速攻が様になって来た頃に公式戦だ。
「慶、明後日…勝つぞ」
静かに、しかし通る声で仁は言った。
「任せろ、どんどんボールくれよ」
旭中学校バレー部で1年生で試合にでるのは恐らくこの二人だけだ。
そのプレッシャーと期待に応えるため、暑い体育館のなか熱い汗を流す慶と仁とチームメイト達だった…