第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 32話 楓の焦り
再び楓の額に手を当てると、少しだけ熱は下がっていた。が。さっきまで手を繋がれていたりなんだりしていたが、それは意識がなかったから。現に楓も気付いたら慌てて手を離した。
そんな楓なのだが、看病中に何度も触っていた楓の額に手を当てることになれてしまった仁はごく自然に同じことを繰り返せば楓が熱以外の理由で赤い顔をしていることに気がつかない。
(じ、仁…あぁ…でもずっと看病してくれてたんだっけ…看病に必要な事…だしね…)
それにしたって体温計で調べることもできるはずだが、これまで仁が手を当てるという方法をとっていた以上同じ調べ方をするのも自然であり、なにより楓も別に嫌な訳ではないのだ。
(で…でも恥ずかし過ぎる…)
大人びた楓に取っては中学生らしいことで少し困っていると、
いつのまにかチャイムが鳴ったのだろうか、五十嵐と慶が我先にと駆け込んでくる。
「雪原さんっ!大丈夫?」
と、慶。
「雪原、今、ご家族の方はいないのか?電話に出ないのだが」
と、五十嵐が一辺に喋り2人のうち慶の方は自分から伝えれば良いと、肩で息をしている慶の方に歩いていく。
「慶、うるさい、病体に触る、静かに話せ」
そう先に忠告してから楓の体調を説明する。
慶もやはり心配していたのだろう、良くなったと伝えれば顔がほころぶ。
「そっかぁ…よかった!」
ニカッと効果音が聞こえそうなように、やはり爽やかに笑った慶だった。
五十嵐に返答をしながらそんな2人をみて自然と笑顔になった楓も元気が出たようだった…