第2章 テスト…そして夏休み前半
霧が晴れる頃に 31話 目覚めの楓
次に楓が起きたのは2時間目の途中だった。
1時間目が終わると来るはずだった五十嵐は何故かこない。
構わないか、と2時間目に入っても仁と楓以外いない保健室に居座り、離されることのない手をしっかりと握りずっと隣に座っていた仁は時折タオルを片手で絞る器用な真似をしながらずっと楓を看病し続けた。
タオルを絞り終え、少し熱の低くなった額に乗せると楓が目を開ける。
「楓…起きた?」
「う…ん…」
乾いた声で答える楓には水が必要かと思い、水道で水を汲もうと立ち上がろうとするがあることに気がつく、2人の手がしっかりと繋がれままなのだ。
仁とて年頃の男、鈍いところもあるがしっかり年相応の欲もある。
仁が繋がれている手を離すか、それともこのまま握っているか色欲(と、いっても手を繋ぐという初歩的過ぎることだが)と理性のあいだで葛藤していれば、いつのまにか手を凝視していた仁に楓が気付き「あっ」と手を離す。
「ご、ごめん、もしかしてずっと…?」
申し訳ないような、恥ずかしいような顔で聞いてくる楓に「大丈夫」と言い、水を持って行ってやればまだ体を起こせずいる楓の背中を支えてやり、楓の手にコップを持たせてやる。
「ん…ありが…と」
乾いた唇にコップをあて水を飲み、少し落ち着いた楓に安心した仁は急に気が抜ける。
そんな仁に(あぁ…今までずっと看病しててくれたんだな…)
倒れた段階からほぼ記憶がない楓はなんとなくさっきまで繋がれていた手に寂しさを覚えた…