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霧が晴れる頃に

第2章 テスト…そして夏休み前半


霧が晴れる頃に 30話 保健室到着

椅子から滑り落ちるように倒れた楓に誰よりも素早く反応した仁は楓に駆け寄る。
楓はいつもは白い、雪のような頬をしているが今そこは赤い。
しかし頬意外のところは青白く、額に手を当ててみれば明らかに平熱でない温度。
(これは………まずいっ)
そう思うが早いか、仁はクラスでは初めて大きいといえる声で「五十嵐!俺、こいつ保健室に連れてく!霙は休みだし」とだけいい、楓を俗に言うお姫様抱っこで抱えて楓に極力負担をかけぬように保健室に向かう。
あまりにも迅速な仁の対応に圧倒されるクラスメイトと五十嵐だったがなんとか「今!保健室に先生いないからお前ついてろ!私は授業終わったら行く!」
と、それだけはと、保健室に向かう仁の後ろ姿に伝えた。
(これ以上悪くなってくれるなよ)
必死に、必死に意識のない楓に願う。

保健室に着いた仁はベッドに楓を降ろす、慎重にだ。
荒い呼吸をする楓の汗ばむ額に再び手を当てればやはり熱い。
仁はベッドの脇にあるタオルを濡らし楓の額に乗せ、楓のベッドから落ちている手をベッドに乗せようと楓の手を握るとすぐに、しかし弱々しく握り返される。
楓の顔を見れば意識は一応戻ったようだがおぼろげとしている楓が「じ…ん…」と、掠れる声で言う。
「いいから…ここにいるから寝ろ」
今にも消えてしまいそうな楓の手をしっかり握り、寝ろと促せばすでに意識はない。
(楓がこんなに弱るなんて…)
「楓っ…」仁の悲痛な声を聞こえたのだろうか、少しだけ手を握る力が強くなった楓は時折咳をしながら眠り続けた…
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