
第1章 入学
霧が晴れる頃に 22話 部活決定
バスケ・サッカー・バドミントン・野球・バレーボール・吹奏楽・科学・弓道・茶道・調理…
10日間色々な部活に参加してみてわかったのは慶の恐るべき身体能力だった。サッカーをやればキーパーでナイスセーブを、バレーボールをやれば強烈なスパイクを、野球をやれば外野から中継なしで直接バッグホームができる遠投力。
その身体能力と高身長を活かせば相当良い選手になるはずと、柄にもなく仁は頭の方は極端に残念な慶の変わりにどの部活がベストか考えた。
仁自身はといえば10日間の授業中にやった体力テストを結果からわかるよう、どれも平均的な身体能力なので、どの部活でもさほど得意も不得意もなかった。
女子組は運動はあまり得意でないようで10日目に行った調理に決まりそうな雰囲気だった。
(調理部で慶は電子レンジに卵を入れて二度と来ないでと言われた)
そして11日目の昼休み、いつものよう4人で机をくっつけ弁当を食べながら、どの部活に決定するか話し合っていた。
「私と楓ちゃんは調理部にするね、料理上手くなりたいし」
頷く楓にも迷いはなかった。
「あぁ、で、問題は慶なんだが、この身長と身体能力を最大に活かすのはバスケ部と俺は思う」
昨日の夜仁がたどり着いた答えを無視し慶は
「仁はどこやるの?」
「俺?俺は部員が多くなくて俺でも出れそうなバレー部かな」
「じゃ、俺もそこにするな!」
と言い放った。
仁が「おいっ!お前はもっと競争率激しい部活で平気だろ!」や「お前3年になればダンクさえもできるようになるかもだぞ!」と、もったいないの一心で引き止めようとするが、慶が
「仁と同じとこがいい!」
との一言で仁を黙らせた。
仁はこれまで、誰かに同じが良いと言われたことはなかった。誰かに必要と言葉にされたことはなかった。
そのことを知らず知らずのうちにコンプレックスとなっていた仁を黙らせるには十分な言葉だった。
仁は少しだけ目頭が熱くなっているのを見咎めたのは仁の斜め前の席で好物のミニオムレツを頬張っていた楓だけだった。
(仁、ちょっとだけ涙目?)
と、オムレツを飲み込みながら仁の瞳を見つめること10秒、なに見つめてんの?と、隣の林に言われた楓はなんでもないと答え(なんだったんだろ…?)と思ったがそれ以上気にすることもせず再び弁当を食べはじめたのは仁にとっては幸運だった。
