第1章 入学
霧が晴れる頃に 2話 出会い
「ふぁぁ…」と、大きなあくびをした仁は今、旭中学校に向かっていた。
仁は少しだけ楽しみだった、気が合う友達ができるかもしれない。という期待が少しだけあったからだ。
なにせ旭中学校は生徒数が多い。
3つの小学校の生徒が集まって来るからだ。
つまり、クラスのうちの半分以上は知らない人、ということだ。
それだけ人数がいれば気が合うのもいるかも知れない。というのが仁の考えだ。
(まぁ、いなかったら小学校と同じように過ごすだけ…)
そんなことを考えていた仁の足になにか薄いものを踏んだ感触がした。
ん?と、仁が足元を見ると
A4サイズの紙があった。紙にはなにか書いてあり拾い上げて読んでみると手作りの今日の持ち物リストだった。
(初日だから、全然持ってくるものないのに、それでも忘れると思ったのか?)
と、仁が思った時にせわしない音…いや、声が入ってきた。
「ご、ごめんなさいっ!…あのっそれ私のです!」
酷く緊張しているような声で話しかけてきたのはかなり小柄で肩まで届く、少し茶色の髪をした少女が薄い黄色バッグを両手に抱えていた。よく見ればバッグのチャックが開いている。
「ほら」と、仁はさっき踏んでしまった紙をその少女に渡した、幸いほとんど汚れていない。
「ありがとうございますっ」
また、少女は緊張した声で短く礼を言うとさっき仁が踏んでしまった紙をバッグに入れながら頼りない足取りで、どうやら先に行ってるらしい友達に追いつくべく小走りで通学路を走っていった。
(ずいぶんテンパってんな、あの子)いつのまにか足が止まっていた仁はその少女の行った道を眠そうに歩いていった。