第1章 入学
霧ケ晴れる頃に 1話 卒業
「写真撮ろ!」
「じゃあまた中学で遊ぼ!」
「そういえばあいつコクったって」
「やるな、で?どうなったの?」
小学校の卒業式が終わり、卒業生達は明るい顔で話し込んでいる中、同じく卒業式の霧ケ谷仁(きりがやじん)は他の生徒とは違う表情で帰り支度を済ませ今、門を出た。
(つまんね…)
重い足を引きずるように進ませながら仁は今思ってることを胸の中で呟いた。
彼は少し大人びており、周りからしたら近寄りがたく、少し敬遠され友人は多くなかった。
彼自身そのことに気付いてはいたが、特に不満もなく、構わないとも思っていた。
そんな仁にも友人が全くいないわけではない。
「仁、なんて歩き方してるの、靴、痛むよ。」
「楓か…」
話しかけてきた少女は雪原楓(ゆきはらかえで)、
仁の数少ない友人である。
彼女もまた大人びて近寄りがたい雰囲気があったが、仁とは波長が合い、5年生からの図書委員会で知り合って、そのうち通っていた図書館でも会うようになり、そして、ひとつ大きなキッカケがあり、話すようになった。
「やっと卒業だね。中学楽しいと良いな。」
「そうだな…楓、彼氏とか作るのか?」
少しだけ嬉しそうに言う彼女に(こいつ顔は良いからな)などと仁は考えながら聞くと楓は凍りつくような声で言った。
「男なんてキャーキャー騒ぐ女が好きな馬鹿なやつらなの。第一私、男嫌いだし」
それを聞いた仁は(俺も男なんだがな…)との感想を抱いたが口には出さず黙って歩いた。
しばらく2人で黙々と歩くと別れる所に着き、楓と「じゃあね」とだけ言いそれぞれの家に向かった。
仁は家につくと小さく「っだいま」と言いベッドに倒れ込んで
(中学か…少しは楽しくなるといいけどな…あ、でも遠い…つら…)
などと考えながら浅い眠りに落ちて行った。