第1章 入学
霧が晴れる頃に 19話 林の能力
コポ…ポ…
「お、終わったか」
コーヒーが入るまでに楓との接仕方をびっちり慶に教え込んだ後、仁は少し疲れたのかボーッと昔のことを思い出していた。
(そんなことも、あったんだっけな…)
そんなことを考えながら仁は4人分のコーヒーをマグカップに分け入れて慶に2人分持たせ、2階で待つ女子2人に届けに行く。
(そういや、あいつらどうしてんだ…)
そんなことを考えている間にも、すでに仁の部屋の前にたどり着いた男子2人はコーヒーをこぼさぬよう、ゆっくりと入っていくと仁にとっては驚くべき、慶にとってはいつも通りの光景が目に入った。
なんと…林と楓が異常に仲良く、笑顔で話していたのだ。
(ありえねぇ!楓がほぼ初対面の人と仲良く!?ありえねぇ!)
小学校からの無愛想な楓を知っている仁は危うく手に持ったコーヒーを零しそうになったので慌てて机にマグカップを置くが、まだ驚きを隠せないでいた。
少し遅れて仁の隣に来た慶は
「さすが林、誰とでもすぐに仲良くなれる能力を持っている」
と、仁に言っているのか妙な説明口調でそんなことを言っていた。
そんな2人をそっちのけ…というかまだ慶と仁に気付かないでなにやら部活をどうするだの言っている。
(ま、まぁ、仲が良くなったらなにより)
驚きで上手く働かない思考を急ぎ起こし、そう考えた仁は、今なら慶も受け入れるかもしれないと、話しに加わるため、ベッドに寄り掛かって話しをしている2人に
「おーい、コーヒーですよ」
と、2人に言ってみればやっと気付いたのか、コーヒーを受け取ってもらえた仁は2人の前に腰を下ろした。