第1章 入学
霧が晴れる頃に 17話 コーヒーが美味しくなるまで 連弾
(なんだこれ…)
仁は楓と連弾していると、不思議と手は滑らか、音は美しくなっていった。
楓はといえば、それはもう楽しそうに嬉しそうに…弾いていた。
彼女は彼女の力量について来られる人と連弾するのが初めてなのか、どんどん調子を上げていった。
ジャーン
最後の音を勢いよく弾き、仁も楓も満足げに曲を終えた。
「すごい…気持ちいいね」
「あぁ…なんかいつもよりずっと、上手に、気持ち良く弾けた」
2人の意見は重なりもう1曲…またもう1曲…と弾いて行くうちにすっかり服は乾ききった。
すでに外は真っ暗闇に飲み込まれていて、そろそろ帰らせなければな…と思っていると、楓が「私、帰らなきゃ、服ありがと、洗って返すね」
と言い、帰ろうとするが
「おいおい、送るよ、暗いし」
と、急いで引き止め、2人で雨の止んだ夜の暗闇を踏み出していった…