第7章 霧が晴れる時
霧が晴れる頃に 143話 慶との一騎打ち
なにはともあれ結局、仁と慶の一騎打ちだが…
(さて、こいつはどうするかな…)
身体能力が並外れている慶にまともにやって勝てる訳がないので方法を考える。
(五十嵐の止めるタイミングを先読み…いやでも決勝だ、これまでとは全然違うだろう…なら、慶の気をそらせることと五十嵐の曲を止めるタイミングをコントロールすることを同時に行うのが最善…どうやってやろうか…)
たかが椅子取りゲームにここまで思考する人も珍しいだろうと自分に少し苦笑しながらも考えることを楽しんでる自分がいて、この状態を作ってくれた林に感謝する。
その林は何処かと、歩きながら探すと林の側に慶の気をそらせる絶好のネタがあった。
(五十嵐の性格からして…よし)
思考がまとまった仁は曲が止まらないうちに今度はクラス中に聞こえる声で言った。
「あ、冬花の手をゲリラが握ってる」
「えっ?」と、声をあげる冬花。
「なっ!?」と、冬花に近づく異物(ここではゲリラのこと)を排除しようと首を回す慶。
そこで五十嵐はニヤっと笑いラジカセの停止ボタンを押した。
「勝ち」
仁はゆっくりと椅子に腰を下ろした。