• テキストサイズ

霧が晴れる頃に

第6章 春へ…


霧が晴れる頃に 137話 数日後

事件から数日、いろいろゴタゴタはあったもののすっかりいつも通り4人で昼ご飯を食べていると楓が頬杖をついて言った。

「で?」
「で、ってなんだよ?」

楓が水筒に入れてきた紅茶を仁に渡しながら言う。

「雨宮君と冬花ちゃんのその後について、どうなの?」
「ええ!?…どうって…チョコはおいしく頂いたけど」

戸惑う慶は珍しいなと少しだけ面白く思いながら仁は受けとった紅茶を一口飲む。

「あれだけのことやっといてなんとも思ってないなんて無いよね?」
「いや、あれは誰でも必死に助けるだろ、たまたま動けたのが俺ってだけだ!」

楓は仁の飲んだ紅茶のカップを受け取り冷ましつつそのまま一口飲み、話を続ける。

「助けた後のことは?誰にでもあんなことするの?」
楓はニヤニヤしながら言い続ける。
「頭、ポンポンって撫でたり?」
「あれはっ、その、なんか…」
「なんだっけ?首に顔近付けて『じっとしてろ』だっけね」
「だ、だって、傷が…な?」
「にしたって近すぎない?近付きたかった?」
「う…」

楓の怒涛の追撃に慶が言葉を詰まらせたのを林が追い撃ちをかける。

「慶ちゃんさー、私がさらわれた時はあんなに必死じゃなかったよねー」
林は目を半目にしてじっとりと慶を見つめる。

「そんなことはないぞ!林!」
「ふーん?私だってお腹とか肩とか蹴られたんだけど?」
「だからしっかりあいつらボコボコにしたじゃんか」
(慶達の会話に言葉に聞き耳を立てていたらしい女不良グループ三人組がビクッと震えたのを仁は見逃さなかった)

「まぁとにかく!慶ちゃん冬花ちゃんが好きなん…っっっっーーー!?」
「馬鹿!声がでかい馬鹿!」
慌てて林の口をふさぎ、林の声を掻き消すように大きな声を出す慶。

(あのやり取り見られてたんだからクラス中がわかってると思うけどな…)
仁は楓が慶の大きな声に驚き紅茶を零すのを防ぎつつ仁はあの時のやり取りを思い出す。

「じゃあ慶ちゃんの久しぶりの恋を応援しますか!」
(どう考えても両思いだけどな)
なんて、野暮なことは言わなかった。
/ 162ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp