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霧が晴れる頃に

第6章 春へ…


霧が晴れる頃に 135話 潰れたもの

慶の顔の近さにプルプル震えていた冬花はなんとか逃げ道を作ろうと口を開く。

「あ、雨宮君にチョコあるの!」
思い付きで言ってしまい冬花はしまった。と、思ったが時すでに遅し、慶は冬花の机を見つけたところだ。

「あ…」

先ほど、慶が打たれた後、寄り掛かって慶と一緒に倒れた机があった。
当然倒れた机にかかっていた鞄も倒れている。

「雨宮君は座っててね」
慶の怪我を考慮して言い、冬花はしゃがみ鞄から今朝抱えていた大きめの包みを取り出す。

運悪く机の重みがかかってしまったらしく包みはペシャンコ、当然中身も潰れてしまっているだろう。

冬花はガックリとうなだれ、後ろにいる慶にまた作り直すと伝えようと勢いよく立ち上がる。すると頭部に鈍い痛みを感じた。

「あがっ」
「いたっ」

座っていろと冬花の気遣いで言われたのにも関わらず、慶は立ち上がり冬花がしゃがんでいる上から鞄の中を覗き込んでたらしい。
よって立ち上がった冬花の頭で慶のあごをアッパーする形になってしまったのだ。

「いてて…」と、2人で言いつつ慶は冬花の持っている包みを奪い取る。

「これだよな?」
「え、あ、いや、潰れちゃったから作り直すよ」
「えー、俺これがいいな」
「潰れちゃってるよ?」
「頑張って作ってくれたんだろ?これがいい」
「でも…」
「これがいいの」

慶にそう言い切られてしまい、言い返せる冬花でもなく、潰れたものを渡すことに申し訳なさから俯き小さく唸る。

そのことに気付いたのかは定かではないが慶は突然冬花の頭をポンポンと撫で始めた。

冬花は「え?え?」と、聞こえてきそうな顔をして、慌てて恥ずかしがるがやはり嬉しい訳で…幸せそうな顔をした。




…という一部始終を恐怖から解放されて落ち着いてきたクラスメイト全員(ゲリラを除く)から見られていたのだった。
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