第1章 入学
霧が晴れる頃に 14話 コーヒーが美味しくなるまで 雨
コポポポポポ
コーヒーミルから出る静かな通り抜ける様な音が響く中、コーヒーの香りが鼻をくすぐる。
仁が入れるコーヒーはなかなかな物だ、この味になるまでには過程があった。
時を遡るほど約10ヶ月前ーー
「6月だなぁ」
「…うん…」
たまたま図書館であった、2人は委員会の知り合い程度だったが学校終わった後、4時から6時まで図書館にいる。という生活リズムが重なり方向がほぼ同じというだけで一緒にのんびり帰っていた。
ゴロゴロゴロ……ザアアアアア
薄暗い雲から雷鳴が聞こえたと思ったら急に土砂降りの雨が降ってきた。
「うおっ、いきなり降り出したな。俺、傘ないぞ!」
「…私もよ」
どちらかが持っていたところでいくら大人びているとはいえ同じ傘に入ったかどうかは謎だが取り合えずどちらも傘及び雨を防げる物は持っていなかった。
「おい、雪原っ、ここから俺の家なら遠くない、走るぞ!」
雷鳴と雨が降り注ぐ中仁は目一杯に声を出し、楓に後に続くよう言い、走り出した。
はぁ……はぁ……
仁の家まで3分ほどだったが3分間走るのは仁はともかく楓には辛い事だったがなんとか息を切らせながらたどり着いた。
「濡れたな…6月だし濡れればまだ寒い…シャワーくらい浴びてけ…」
仁は向こうが戸惑うのは承知で、しかしこのまま濡れた服で帰す訳にもいかずそういってみれば
「うん…」
すぐ承諾を得たので鍵を開けて中に入っていった。