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霧が晴れる頃に

第6章 春へ…


霧が晴れる頃に 130話 ラジカセ作戦

「ったく早くしろよな」
赤雲は悪態をつき、後ろの掃除用具入れに勢い良くぶつかる。

(いまだっ!!)

仁は右手に持った釣り糸を引っ張る。
赤雲の上のラジカセが引っ張られ、落ちて来る。

ガシャン!!!!

鈍い音をラジカセが出す。
(どうだ!?人間が気絶するには充分なはずだが…)

仁は、赤雲をグラウンドで見かけてから入ってくるなら1組の後ろのドアからだろうと予測をした。理由は単純、後ろのドアの方が階段に近いのだ。1組に入ってきたのは先生が不在だから。

「いっっっってぇぇぇぇぇ!!!」
頭を抱え込んだ赤雲だったが気絶などしない。当たり所がよかったのだろう。
(くそっ!)

しかし、これまでずっと仁達から目を離さなかった赤雲がやっと一瞬、2秒程だが目を離した。

その隙に仁はコソコソとこれまで移動して仁の後ろまで来ていた慶を無理矢理引っ張り教室の柱、赤雲の位置から死角となる場所に押し出す。

勢い良く掃除用具入れにぶつかったことでラジカセが落ちたのだと納得するところまで仁の計算だ(気絶しなかった場合の)
生徒がなにかしたと考えることなく赤雲は仁達を見張り直す。

30人を越えるクラスメイト達を1人いなくなったくらい気付くはずもなく赤雲はさっきぶつけた自分の頭を撫でながら携帯で時間を確認している。

(…慶のとこから4歩…俺から6歩…持ち物はガムテープと楓の筆箱のカッター…人質は逃げれる状態じゃない…)
いまの条件を必死で頭で整理し、打開策を考える。なんせ、あと20分したら冬花は恐らく連れていかれてしまうのだ、それだけは避けなければいけない。

(まともに動けるのは何人だ…?)

辺りを見回すと、女子は全員ダメそうだった。
林は静かに泣いているし仁の後ろにいる楓でさえ仁の服の裾を握りカタカタと震えている。

男子はといえばいつもの元気は何処へやら、すっかり萎縮してしまいピクリとも動こうとしない。
ゲリラもなんとかクラスメイトの肩を叩き励ましているが動ける状態ではないだろう。

状況はかなり厳しかった。
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