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霧が晴れる頃に

第6章 春へ…


霧が晴れる頃に 129話 人質

「キャー!!」女子生徒の誰かが叫んだ。

バンっ!!

中学校の教室で聞こえるはずのない銃声が鳴り響く。
「お前らぁ!大人しくしろ!!騒いだら殺すぞ!!」

教室の後ろから入ってきた男は赤雲智(あかぐもさとし)、コンビニ強盗で銃を持ち、逃走中だと今朝のニュースでやっていた。

(恐れていたことが!!)
仁は素早く前の方の席に座ったままいる楓の前に立ち、赤雲から楓を隠す。

クラスメイト達は状況を理解しはじめたのか、怯えきった目でヘナヘナと座り込み震えている。

「お前らはこれから人質だ…なぁに、大人しくしてりゃ殺しゃしねぇよ、多分な」
コンビニ強盗がここまでわかりやすく悪者になれるものかと仁はこんな時に変に働く頭で考える。

「さぁ、お前ら立て!!そんで教室の前に移動しろ…早くしろ!!」
「ひっ」
怯えて座り込んでいた教室の後ろの方にいる生徒たちはよろよろと立ち上がり前の方へ移動してくる。

が、今、席順の関係で1番赤雲の近くにいる冬花が呼び止められる。
「おっと…お前は来い!」

冬花は引っ張られ首にナイフを突きつけられ拘束される。
「いくら中学生としてもなにしだすかわかんねぇからなぁ?大人しくしとけよ!」

赤雲はそう言うと携帯電話を取りだし、電話をかけている、しかし目はしっかりと仁達を見張っている。

電話の相手は警察、人質をとっているのだからと好き勝手な事を言っている。
「いいか、30分いないに車を用意しろ!そうだな…ついでに刑務所にいる俺の仲間も連れて来い!来なきゃガキが30人ばかし死ぬぜ?」

どうやら車で逃げるつもりのようだ。
(車ってことはまた人質を連れていくだろう…そうすると星が連れていかれるな普通に考えて…)
こんな状況で、いやこんな状況だからこそ仁は懸命に思考を巡らせ最善策を考える。

「わかったな!?」
赤雲は話し終わったのか電話をきる。

携帯を置くと赤雲は涙で顔を濡らしている冬花の足を紐で固定して自分の足元に座らせた。
(わりぃ星、怖いよな、もうちょっとだけ我慢してくれ!)

仁は手に持った釣り糸を引くタイミングを待つ。魚を待つかのように…
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