第1章 入学
霧が晴れる頃に 12話 緊急事態
学活の内容はクラス目標を決めたのと部活の説明があった。
「部活の本入部は3週間先から。明日からは体験入部」
何となく部活は決めてる仁は(関係ないな)と再び睡眠を試みる。
帰り道、林と慶は2人でたまに仁のことをチラチラ見ながらずっと話していた。
(なーに企んでんだか)
気付きつつも仁はほっとくことにし、今日はやけにあっさり別れた慶と林を奇妙に思いつつ、帰宅し、部屋で楓を待った。
ピンポーン
家の呼び鈴が鳴り、楓を迎えて部屋に通す。
「相変わらず本とピアノしかないね」
「失礼なベッドもあるぞ」
そんな慣れたような会話をしながら貸していたWORLD ENDというタイトルの本を受けとる。
この本は世界が終わるとわかった時に人はどのような行動を取るのかを予測した本だ。
「なかなかでした」
そんなコメントを頂いた仁は
「そりゃよかった」
とだけ返し
「帰る?」
と聞いてみたが、答えはわかっていた。
「コーヒー飲んだら帰る」
少しフワッと微笑みながら答える楓は、そこらのアイドルよりずっと可愛いとは思う。これは仁の正直な感想だった。
(でもこんなに男嫌いじゃね…)
そんなことを思いながら2人分のコーヒーを入れるべくキッチンに行こうとすると、携帯から着信の音がした。
(誰だ?)
心当たりはなく、不思議に思いながら見てみれば『霙林』からのメールが受信トレイにあった。
「霙?」
思わず仁が口にだすと
「霙林?あのちっちゃくて髪が肩くらいの子?」
さすが楓、2日で接点のない女子の名前を覚えている。
「おう、で、本文は…」
『霧ケ谷君。今ね、慶ちゃん霧ケ谷君の家の前にいるよ』
仁が渡した携帯の手作り説明書がよかったのか、短い文ではあるが漢字を使い、誤字もなく送られてきたメールには仁が誤って机に肘をぶつけるほどの文が打ってある。
肘から手に走る痛みに耐えながら呟いた。
「馬鹿共…」
(なにも楓がいるときにこなくても…)
林だけならそこまで気にすることもないが慶もいるのだ、男でどちらかといえば騒がしい彼は楓が苦手…というか嫌いにするタイプだ。
(まずいな…)と思いながらも追い返す訳にも、コーヒーを結構楽しみにしているように見える楓を帰す訳にもいかず、仕方なく仁は
「わりぃ、なんかクラスの奴2人きちまった」
と言ってから楓を部屋に残し2人を迎えた。
